５年前にワープ

去年、
苗から育てて、

去年から今年にかけて
うちの食卓に彩を添えてくれたイタリアンパセリ
 
イタリアンパセリは
２年草で今年限りで終わりです。

今年も何度か食卓に上がったけど
去年より
香りや味も落ちた感じがしていました。

食卓に上がる回数も少なくなり、
あっという間に

こんな小さな
線香花火みたいな花を咲かせていました。
 
もう、
食べるには手遅れです。

せめて観賞用にと、
１００均で買った小瓶に挿し

キッチンの
シンクとガステーブルの間に吊るしておきました。

（キッチンの水と火の間に置く観葉植物は
　風水では効果的だそうです）


５年前、
父は、
風邪をこじらせ肺炎になり、
持病の心臓病も悪化していました。

それでも、
私には辛い素振りは見せなかったけど、

夜中、
何度も目を覚ます父に、
隣の部屋で寝ていた私が声をかけると、

「夜になると不安になる」
とボソッとつぶやきました。

何事にも動じたことがなかった父だったけど、
父は自分の死期を悟っていたのだと思います。
　
それが、
父が私に見せた
最初で最後の弱さでした。

それから数日後、
入院していた父は、
もうろうとしていた日が何日も続いていたのに、

その日に限って、
しっかりとした口調でよくしゃべりました。

日曜日だったので、

私は
朝から夕方まで父の病室にいて
一日中父としゃべり、

「明日からまた仕事やし、
ぼちぼち帰るわな。」

と、病室を後にする私に、

父は、
「しゃあないな～」と言って、
それから数時間後の明け方亡くなりました。

それが
私と父が交わした最後の言葉です。

父の最期に対面した時、

まだ寒い早春だったのに、
線香花火が燃え尽きる時の、

あの小さな火の玉がポトンと地面に落ちるような
そんな感じがしたのを
今でも鮮明に覚えています。

今となっては、
どうしようもありませんが、

「夜になると不安になる」
と言っていた、その最後の「夜」に、

そばにいてあげられなかったことが
今でも心残りです。

今年で終わる
イタリアンパセリの
線香花火のような花を見ていたら
　
５年前のあの時に
ワープしてしまいました。




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